2026年9月の欧州物流の混乱は、港のヤード、ライン川、包装規制の書類対応で同時に進んでいる。ハンブルク港では9月2〜4日に警告スト、オランダの主要港では4日にストがあり、ドイツの港湾労使交渉は9月15日時点で決着していない。
2026年9月15日時点で、欧州の主要港は動いているがヤードに余裕がない。キューネ・アンド・ナーゲルの週報(9月2〜8日)では、ロッテルダムのAPMTマースフラクテ2が約90%、ブレーマーハーフェンが88%だった。ライン川カウプの水位は15日朝28cmで、ドイツ連邦水文研究所(BfG)は27日まで77cmを下回る確率を100%とする。PPWRは8月12日から適用中で、製品識別子は11月1日、EUDRは12月30日に始まる。
要点
- 港湾ヤード:マースフラクテ2で約90%、ブレーマーハーフェンで88%(キューネ・アンド・ナーゲル、9月2〜8日)。搬出は本船着岸前に手配
- ドイツの港湾スト:労使交渉は9月15日時点で妥結も新たなスト通告もなし。ドイツ経由の接続は余裕を持った日程に
- ライン川:カウプは9月15日朝28cm、27日まで77cm未満の確率100%(BfG)。バージの渇水サーチャージは「協議」
- アジア発の航路:ジェミニ(マースク/ハパックロイド)の3航路が9月19日以降の出港分からスエズ経由に。ONEは9月14日時点で喜望峰回り(Linerlytica)
- EU規制:PPWRは8月12日から適用。製品識別子は11月1日、EUDRは12月30日から
欧州物流の混乱:ロッテルダムとドイツの港はどこまで埋まっているか
キューネ・アンド・ナーゲルの港湾週報によると、9月2〜8日のロッテルダムはAPMTマースフラクテ2のヤード使用率が約90%、ECTが約83%だった。ECTはリーファー電源が限られ、バージとフィーダー船が24〜72時間遅れた。ロッテルダムのヤードは、スト前の8月19〜25日の週にすでに89〜90%だった。
同じ週、ブレーマーハーフェンはヤード使用率88%で、危険品とOOG貨物の受け入れが特に厳しい。ハンブルクはCTAが78%、CTHが83%。ヴィルヘルムスハーフェンは週の処理能力の3割超を失う見通しだった。
ハンブルクの警告ストは、統一サービス産業労働組合(ver.di)の賃上げ要求によるものだ。ドイツ港湾経営者団体(ZDS)が9日に示した2案のうち、ver.diは12カ月案だけを組合員に諮り、意見集約は14日に締め切られた。オランダでは4日11時15分〜19時、ロッテルダムなど4港でストが行われた。政府の社会保障削減への抗議で、賃金交渉とは別件だ。
マースクの9月14日の告知によると、ハパックロイドと組むジェミニのAE5、AE11、ME2はスエズ経由に切り替わる。紅海周辺の安定が続くことが前提で、3航路とも日本の港には寄らない。ONE(邦船3社のコンテナ船事業会社)は、Linerlyticaの9月14日の分析では喜望峰回りのままだ。ジェトロ(5月13日)によると、日本と欧州間のリードタイムは紅海ルートで25〜50日、喜望峰ルートで40〜65日。スエズ経由と確定するまでは、40〜65日で到着日を組んでおきたい。航路別は国際物流の市況(2026年9月)、中東向けは中東向け物流の最新状況で扱う。
運賃は下がっている。ドゥルーリーのWCIでは、9月10日の上海→ロッテルダムが40フィートコンテナ1本あたり3,997ドル(前週比2%安)。日本海事新聞(9月15日付)によると、11日のSCFIは欧州航路が10週続落した。推移は海上運賃の週次まとめにある。
ライン川の渇水と鉄道の運休、内陸輸送はどこで滞っているか
内陸で最も細いのはライン川だ。カウプの水位は8月中旬に観測史上の最低を下回り、9月15日5時は28cm。BfGの14日間確率予報(14日発表)では、27日まで毎日の平均水位が77cmを下回る確率が100%だ。内陸コンテナ輸送会社コンタルゴの渇水サーチャージ表は、カウプ基準の80cm以下とデュースブルク・ルールオルト基準の180cm以下を「協議」とし、15日は両方が該当した。料金はバージが出る日の朝5時の水位で決まる。
鉄道に逃がす余地も狭い。ライン川右岸線のトロイスドルフ〜ヴィースバーデン間は12月12日まで改修で運休中で、業界紙は貨物列車が左岸線に回っていると伝える。10月2日からはハノーファー〜ベルリン間も2027年12月まで閉鎖され、DBインフラGOは9月9日、貨物をブラウンシュヴァイク〜マクデブルク経由に回す計画を示した。
アルプス越えは9月20日前後が山だ。タルヴィージオ〜ウーディネ線は20日まで、シンプロン方面のアローナ〜ドモドッソラ間は18〜20日に運休する。イタリア運輸省のスト登録簿には20〜21日の貨物鉄道ストと28日の港湾ストが載っているが、撤回されることもある。トルコの日系工場からEUへのトラック輸送はトルコ物流の最新動向で扱う。
PPWRはいつから何が必要か:EUDR、3ユーロ関税、CBAMの期限
EU包装・包装廃棄物規則(PPWR、規則(EU)2025/40)は2026年8月12日から適用され、延期の法令はない。すでに必要なのは、重金属と食品接触包装PFASの上限への適合、包装の種類ごとの適合性評価と技術文書、EU適合宣言書、ロット番号と製造者名・所在地の表示、販売する加盟国ごとの拡大生産者責任(EPR)登録だ。統一の分別ラベルはまだ義務になっておらず、空隙率50%の上限は早くても2030年から。日本語の概要はジェトロのPPWR特集にある。
現場はまだ追いついていない。ジェトロの7月31日の記事によると、ドイツの日系化学メーカーは2026年3月に着手して情報収集の途中で、食品メーカーは食品接触PFASの計算に迷い、印刷インクで合計値が基準を超えるという。ドイツの包装登録機関ZSVR(8月12日)によると、自社名で包装品を発注するプライベートブランドの事業者は生産者にあたる。PBの取引先から根拠データを求められる前に、包材メーカーから重金属とPFASのデータを取り寄せておきたい。
輸出梱包では、フランスがパレット、ストレッチフィルム、段ボールなど業務用・産業用包装のEPRを2026年7月1日から2027年1月1日に延期した(ジェトロ、8月6日)。
EU森林破壊防止規則(EUDR)は12月30日から大・中規模の事業者などに、2027年6月30日からその他の零細・小規模事業者に適用される。日本はこの低リスク国に入っている。低リスク国に分類されると、EU側の輸入者は簡素化されたデューディリジェンス(リスク評価・低減は不要)で済む。ただし原産地情報は必要で、標準・高リスクや原産地不明の原料と混ざれば簡素化は使えない。皮革やゴム製品の一部を対象から外す委任法は7月13日に採択され、9月15日時点で官報公示待ちだ(農林水産省のEUDR解説)。
越境ECでEUの消費者に直接売る場合、7月1日から150ユーロ以下の貨物にも1品目3ユーロの関税がかかる。11月1日には製品識別子が必須になり、通関取扱手数料も遅くとも同日までに徴収が始まるが、金額は未定だ。日本郵便もEU宛て郵便物の関税を案内している。
炭素国境調整メカニズム(CBAM)は2026年1月1日から本格適用で、対象品の輸入が年50トンを超える事業者は認可申告者でなければならない。2026年輸入分の申告期限は2027年9月30日で、7〜9月期の証書価格は10月5日に公表される。
港で荷揚げする前に、配送先3カ所のトレーラを組んでおく
ヤード使用率が88〜90%の港では、輸入コンテナの引き取りを急ぐことになる。ロッテルダムで揚げた貨物をドイツ国内の複数の納品先へ回すなら、トレーラの積み方は本船の着岸前に決めておきたい。
作例では、日本からの貨物をロッテルダム港のクロスドックで13.6mカーテントレーラ(1,362×248×270cm、最大積載量25,200kg)1台に積み替え、デュッセルドルフ、ケルン、フランクフルトの順に届ける。ユーロパレットはすべて段積み不可で、配送先ごとに独立区画を設けた。前壁側に最後に降ろすフランクフルト向けの化粧品12パレット(高さ160cm、1枚300kg)、中央にケルン向けの自動車補修部品10パレット(170cm、450kg)、扉側に最初に降ろすデュッセルドルフ向けの日本食品(調味料)8パレット(150cm、380kg)が並ぶ。
30枚すべてが配置され、合計11,140kg、容積50.74%。軸荷重は駆動軸が11,500kgに対して9,453kg(82.2%)、トレーラの軸グループが24,000kgに対して9,984kg(41.6%)だった。段積み不可のパレットは床面しか使えないので、容積が半分程度にとどまるのは想定どおりだ。
寸法と重量が本船の着岸前にそろえば、CargoDuoの積付計画で積載順序と軸荷重を先に確かめられる(トレーラの基本はパレット積載枚数の解説)。PPWRやEUDRの書類はこのソフトでは作れないが、正確な寸法、重量、個数はどの申告にも要る。
荷主がいま手配しておくこと
| 航路・拠点 | 状況(日付) | 影響する期間 | 荷主の手配 |
|---|---|---|---|
| ロッテルダム(マースフラクテ2/ECT) | ヤード使用率約90%/約83%、ECTのバージ遅れ24〜72時間(キューネ・アンド・ナーゲル、9/2〜9/8) | 9月後半 | 本船着岸前に搬出のトラックかバージと通関を手配 |
| ハンブルク/ブレーマーハーフェン/ヴィルヘルムスハーフェン | 労使交渉は9/15時点で妥結・スト通告なし。ブレーマーハーフェン88%、危険品・OOGが逼迫 | 9/15〜9/30 | 接続に余裕を持たせ、ロッテルダム/アントワープの代替を確保 |
| ライン川のバージ(カウプ) | 9/15朝28cm。9/27まで77cm未満の確率100%(BfG)。サーチャージは「協議」 | 少なくとも9/27まで | サーチャージを書面で確認し、トラックの代替を用意 |
| イタリア鉄道・ブレンナー | タルヴィージオ〜ウーディネ線は9/20まで、アローナ〜ドモドッソラ間は9/18〜9/20運休。南行きトラックの流入規制9/21、9/28、10/5 | 9/18〜10/5 | 出発日をずらし、鉄道会社に運行を確認 |
| EU向け越境EC | 3ユーロ関税は7/1から。製品識別子は11/1、通関取扱手数料は遅くとも11/1(金額未定) | 11/1まで | 製品識別子のデータを整え、手数料を予算に計上 |
| EU向け包装(PPWR) | 8/12から適用。包装単位の適合宣言書と技術文書が必要 | 適用中 | 包材メーカーから重金属・PFASのデータを取り寄せる |
- 9月後半にロッテルダムで揚がる貨物は、本船着岸前に搬出のトラックかバージと通関を手配し、バージの到着予定には余裕日数を見込む。
- 9月30日まではハンブルク、ブレーマーハーフェン、ヴィルヘルムスハーフェン経由の接続を詰めて組まず、危険品とOOGは荷揚げ前に引き取りを手配する。
- 9月19日以降にアジアを出る欧州向けは、本船ごとにスエズ経由か喜望峰回りかをフォワーダーに確認し、確定までは40〜65日で納期を組む。
- 10月以降の出荷に向けて、EU向けの包装ごとに適合宣言書、技術文書、重金属・PFASのデータ、表示をそろえる。分別ラベル用の刷り直しはまだしない。
- 12月30日までにEUDR対象品の原産地情報をそろえ、鉄鋼・アルミの契約には10月5日公表のCBAM証書価格を使う価格条項を入れる。
今後1〜2カ月の見通し
- ドイツの港湾労使交渉:ver.diの交渉委員会が次の対応を決める。妥結かスト通告が出た日に、ハンブルク経由の計画を見直す
- 9月19日、21日、24日:ジェミニのAE11、AE5、ME2のスエズ経由初便。紅海周辺の安定が前提なので、実際の運航を本船動静で確かめる
- ライン川:カウプが80cm以下のあいだ、コンタルゴの渇水サーチャージは「協議」のまま
- 9月30日:海運会社がEU排出量取引制度で2025年排出量の70%分の排出枠を引き渡す期限。2026年分は100%が対象で、船社のETSサーチャージの根拠を聞いておきたい
- 10月2日、5日、11月1日、12月30日:ハノーファー〜ベルリン間の鉄道閉鎖、CBAMの7〜9月期価格、製品識別子と通関取扱手数料の期限、EUDRの適用開始(いずれも9月15日時点の予定)
よくある質問
欧州の港は今(2026年9月)混雑していますか?
動いていますが、ヤードに余裕がありません。キューネ・アンド・ナーゲルの週報では、9月2〜8日のロッテルダムのAPMTマースフラクテ2のヤード使用率が約90%、ECTが約83%、ブレーマーハーフェンが88%でした。ECTではバージとフィーダー船の遅れが24〜72時間出ています。9月後半に揚がる輸入貨物は、本船が着く前に搬出の手配を済ませておくのが安全です。
ハンブルク港やロッテルダム港のストライキは日本からの貨物に影響しますか?
9月2〜4日のハンブルクの警告ストと、4日のオランダの港湾ストは終わっています。ただしドイツの港湾労使交渉は9月15日時点で妥結しておらず、新たなスト通告も出ていません。マースクは9月9日、ドイツのターミナルのストがハンブルク、ブレーマーハーフェン、ヴィルヘルムスハーフェン経由の接続に響いたとしています。9月中のドイツ経由の接続は、日程に余裕を持たせて組むことをおすすめします。
ライン川の水位低下で欧州の内陸輸送にはどんな影響がありますか?
カウプの水位は9月15日朝に28cmで、ドイツ連邦水文研究所(BfG)は9月27日まで77cmを下回る確率を100%としています。コンタルゴの渇水サーチャージ表では、15日時点でカウプ基準、デュースブルク基準ともに「協議」の帯でした。ライン川右岸の鉄道線も12月12日まで運休しているため、バージのサーチャージは書面で確認し、トラックの代替を用意しておくのが現実的です。
PPWRはいつから適用ですか?日本の輸出企業は何を用意すればいい?
EU包装・包装廃棄物規則(PPWR)は2026年8月12日から適用されています。包装の種類ごとの適合性評価と技術文書、EU適合宣言書、ロット番号と製造者名・所在地の表示、重金属と食品接触包装のPFASの基準への適合が必要です。欧州委員会のFAQ(ジェトロの要約)では、適合宣言書は包装単位で作ればよいとされています。統一の分別ラベルはまだ義務ではありません。
EUDRはいつから始まりますか?日本は低リスク国ですか?
EU森林破壊防止規則(EUDR)は2026年12月30日から大・中規模の事業者などに適用され、その他の零細・小規模事業者は2027年6月30日からです。日本は低リスク国に分類されています。EU側の輸入者は簡素化されたデューディリジェンス(リスク評価・低減は不要)で済みますが、原産地情報は必要で、標準・高リスクや原産地不明の原料と混ざれば簡素化は使えません。
CBAMは日本からの輸出にいつから影響しますか?
CBAMは2026年1月1日から本格適用に入っており、対象品の輸入が年50トンを超えるEUの事業者は認可申告者である必要があります。証書の販売は2027年2月1日に始まり、2026年輸入分の申告と証書の引き渡しは2027年9月30日が期限です。2026年7〜9月期の証書価格は10月5日に公表されます。鉄鋼やアルミの契約では、この価格を価格条項の基準に使えます。
出所:キューネ・アンド・ナーゲル港湾週報(2026年8月25日、9月8日)、マースク欧州市況(9月9日)とジェミニ航路の告知(9月14日)、ver.diハンブルク(9月2日)、ZDS(9月10日)、ドゥルーリーWCI(9月10日)、日本海事新聞(9月15日付)、Linerlytica(9月14日)、Transport Online(9月4日)、BfG(9月14日)、コンタルゴ(9月15日)、ADAC(9月11日)、VerkehrsRundschau(9月9日)、RFI(8月18日、9月10日)、イタリア運輸省スト登録簿(9月15日確認)、Eurotransport(チロル州の流入規制日程、2025年11月26日)、欧州委員会(PPWR、EUDR、CBAM、Access2Markets 6月30日)、欧州議会(3月26日、9月14日)、ジェトロ(5月13日、7月31日、8月6日、8月10日)、ZSVR(8月12日)、農林水産省、日本郵便。2026年9月15日時点の情報。更新:2026年9月15日(初版)。記載の誤りに気づいた場合は、出所を添えてCargoDuoまでお知らせください。