2026年2月28日にホルムズ海峡がコンテナ船にとって事実上閉じてから、半年が過ぎた。物流への影響はいま紅海側のジッダ港に集まり、荷揚げ後の滞留として表れている。マースクは9月11日時点でダンマン、ジュベイル、イラク向けの受け付けを止めたままだ。
2026年9月15日時点で、サウジ向けのコンテナは紅海側のジッダ港とキング・アブドゥッラー港(KAP)に揚がり、マースクはUAE向けをホールファカン港経由かジュベル・アリ港への陸送に限っている。ジッダ港の7月の取扱量は540,107TEUで過去最高、荷揚げ後の陸側の遅れは約10〜12日(エクスペダイターズ、9月2日)。湾岸向けにはマースクの緊急運賃(20フィート1本1,800ドルから)と、海峡を通る場合の1本1,000ドルがかかる。
要点
- ホルムズ海峡:2月28日からコンテナ船は事実上の通航停止。合同海事情報センター(JMIC)の脅威評価は9月1日時点で「severe(深刻)」
- ジッダ港:7月の取扱量は過去最高。沖待ちは2.2日(9月6〜12日)でも、荷揚げ後の陸側の遅れは約10〜12日(9月2日)。トラックは着岸前に手配
- マースク:9月11日時点でダンマン、ジュベイル、イラク向けは停止。契約貨物のOCR500ドルはUAE向けが9月15日、バーレーン、カタール、クウェート、イラク向けが17日から
- スエズ経由:ジェミニ(マースク/ハパックロイド)が9月14日に4航路の復帰を発表、初便は9月19日。ジッダ港、KAP、サラーラ港への寄港はなし
- サウジの倉庫:リヤド、ジッダ、ダンマン都市圏で稼働率90%超(JLL、2026年4〜6月期)。10〜12月以降の保管枠は早めの交渉
ホルムズ海峡の閉鎖は、中東向けの物流にどう影響しているか
コンテナ船が海峡を通れない状態は変わっていない。ロイズ・リスト・インテリジェンス(LLI)の9月9日の集計では、イラン関連を除く船の8月のホルムズ海峡通航は少なくとも346回で、コンテナ船とばら積み船の動きはほとんど変わらなかった。保安上の事案は9月半ばまで続いている(英国海運貿易オペレーション、9月13日報道)。8月26日に発表された暫定航路も、9月9日時点で開始日、座標、料金が公表されていない(LLI)。
アジアからジッダ港へ向かう船は、バブ・エル・マンデブ海峡を通る。LLIによると、サウジ関連の船を対象とする脅威が7月20日12時(UTC)から有効になり、同海峡の追跡できる通航は7月27日〜8月23日に週平均273回と、それ以前の319回を下回った。コンテナ船の通航は続いている。LLIは8月6日、船体の戦争保険の指定海域(JWC指定海域)が北へ約800km広がり、ジッダとヤンブーを含んだと報じた。これは船主が掛ける保険で、貨物の戦争保険の料率は示されていない。
スエズ経由への復帰は航路単位にとどまる。マースクによると、ジッダ港に寄るのはジェミニのAE19(8月10日からスエズ経由、往復とも寄港)とマースクのMECL(8月から東航で寄港)だ。9月14日に発表されたAE5、AE11、AE12、ME2の4航路はジッダ港、KAP、サラーラ港のどこにも寄らず、両社は紅海周辺の安定を前提としている。欧州向けへの影響は国際物流市況レポートの世界の概況にまとめた。
ジッダ港の滞留は何日か:湾岸各港の9月の状況
財務省の7月の貿易統計では、日本のサウジアラビア向け輸出は838億円(前年同月比4.7%減)、UAE向けは1,515億円(8.5%増)だった。サウジアラビア港湾庁(Mawani)の数字をアラブ・ニュースが8月12日に報じたところでは、サウジ向けの箱が集まるジッダ港の7月の取扱量は540,107TEUで過去最高。サウジ全港の合計597,737TEU(17.5%減)の約9割を1港で扱った計算になる(CargoDuoの試算)。
詰まっているのは陸側だ。Portcastによると9月6〜12日のジッダ港の沖待ちは中央値2.2日だったが、エクスペダイターズは9月2日のアドバイザリーで荷揚げ後の陸側の遅れを約10〜12日としている。マースクは9月9日、ジッダ港とKAPで引き取りとトラックの回転が長引いているとして、トラックを増やした。同社がジッダ港からリヤド、ダンマンへ続けているランドブリッジはトラック輸送で、リヤドとジッダを結ぶ鉄道はまだ開通していない(サウジアラビア鉄道CEO、1月)。
KAPも動いてはいるが、滞貨と内陸輸送力の不足で混んでいる(エクスペダイターズ、9月2日)。ダンマン港の沖待ちは0.06日と短いが、船社が寄らず新規の入港が止まっているためだ。
UAE向けは海峡の外で揚げて陸送する。DPワールドの8月13日の半期決算では、ジュベル・アリ港の設備に物理的な損傷はないが、4〜6月の取扱量は37万4,000TEUで前年同期比90.1%減。海峡の内側にあるため、代わりの揚げ港にはならない。貨物が向かうホールファカン港は沖待ちの中央値が6.16日と、本稿で挙げた港で最も長い。米メディアのセマフォーは9月2日、ホールファカン港とフジャイラ港でトラックが最大12時間並ぶと伝えた。オマーンのサラーラ港は0.47日、ソハール港は1.21日と短い(いずれも9月6〜12日)。
船社の受け付け条件と追加料金、サウジの通関ルール
受け付けの可否は貨物の種類で違う。マースクの9月11日の運航情報では、ドライ貨物のサウジ向けはジッダ港とKAPで受ける。リーファーはKAPを含むサウジ3港とクウェート、カタール、バーレーン向けが停止で、ジッダ港は停止にも受け付けにも載っていない。危険品はジッダ港の現地荷受人向けのみ、OOG(規格外貨物)はサウジ全港で停止している。
料金は積み上がる。マースクの緊急運賃はダンマン、ジュベイル、UAE、カタールなど湾岸向け(オマーンはサラーラを除く)が対象で、20フィート1,800ドル、40フィート3,000ドル、リーファー・特殊・危険品3,800ドル。海峡を通れば1本1,000ドルが加わり、保管は15日目から1TEUにつき1日25ドル。これとは別に、UAE、バーレーン、カタール、クウェート、イラク向けの契約貨物に1本500ドルのOCRが課される。「極東アジア」発は除くとされるが範囲は示されておらず、日本発が対象かは書面で確かめるしかない。
日本海事新聞(9月15日付)によると、9月11日のSCFIは中東航路が過去最高だった。Xenetaの9月9日のスポット運賃は中国→ジッダが40フィートコンテナ1本あたり10,870ドル(2月28日比256%高)。どちらも中国発で、日本発の湾岸向けに公表された指数はない。指数の読み方は海上運賃の週次まとめで扱っている。
サウジ側の書類は前倒しで出す。ザカート・税・関税総局(ZATCA)は2025年10月29日から、海港への到着前に積荷目録と税関申告をFASAHで出すよう義務づけており、ONEのアドバイザリーでは遠方の港からは到着72時間前までだ。2026年8月には、鉄鋼や建材など、SABERで出荷適合証明書を受ける前に製品申告の承認が要る品目が増えたと報じられた。HSコードごとにSABERで確かめたい。
保険では、サウジ政府が9月9日、サウジ再保険会社が主導する海上戦争リスク保険プールを承認した(ジェトロ、9月14日)。紅海と湾岸を含む全海域の貨物や船体が対象だが、開始日も保険料も示されていない。自社の戦争保険がこの区間を担保するかは、損保に書面で確かめておきたい。
サウジアラビアの倉庫は空いているか
空きは少ない。JLLによると2026年4〜6月期、リヤド、ジッダ、ダンマン都市圏の産業用施設の稼働率は90%を超え、賃料の上昇率はダンマンの6.9%が最も高かった。JLLは西部の港へ回った貨物を理由に高い稼働率が当面続くとみており、マースクも8月、倉庫・配送需要は2026年末まで強いとの見方を示した。10〜12月以降の保管を現地で探すなら、交渉は早めに始めたい。
40フィートリーファーにパレットは何枚載るか
リーファーの受け付けは港ごとに絞られている。コンテナが1本増えれば、デマレージと保管料がかかりうる箱も1本増え、湾岸向けなら緊急運賃も1本分増える。マースクは食品・医薬品に特別な配慮をするとしているが、船腹の保証はない。横浜港からジッダ港へ冷凍ホタテ貝柱を送るケースを、CargoDuoで計算した。
パレットは120×100×190cm、1枚950kg、段積み不可の床置き。40ftハイキューブリーファーの内寸は1,157.8×228.0×252.5cm、最大積載量29,700kg。向きを混ぜると、120cmの辺を長手にそろえた9枚の列(1,080cm)と、100cmの辺を長手にした11枚の列(1,100cm)が並び、幅100+120=220cm(内幅228cm)で20枚すべてが載った。重量19.00t(63.97%)、容積68.41%。
すべて同じ向きにそろえると2列とも9枚ずつ(幅200cm)で、2枚(1,900kg)が未配置になる。
同じ1本に2枚多く積めれば、プラグ1口あたりの貨物は約11%増える。ジッダ港のリーファー受け付けを書面で確かめたら、その1本は20枚で埋めたい。この比較はCargoDuoの積付計画で数秒で出せる。リーファーの内寸は海上コンテナのサイズにまとめた。
荷主がいま手配しておくこと
| 航路・拠点 | 状況(日付) | 影響の期間 | 荷主の対応 |
|---|---|---|---|
| ホルムズ海峡→湾岸各港 | 2/28からコンテナ船は事実上通航停止、JMICの評価は「severe」(9/1) | いま手配する10〜12月分 | 紅海側か海峡の外で揚げる経路で組み、ブッキング時に勧告を再確認 |
| ジッダ港(輸入) | 沖待ち2.2日(9/6〜12)、荷揚げ後の陸側の遅れ約10〜12日(9/2) | 9月下旬〜10月着 | FASAHは到着72時間前までに提出、トラックは着岸前に手配、2週間分の保管料とデマレージを見込む |
| ジッダ港→リヤド/ダンマン(陸送) | マースクがトラック輸送を提供(9/11)、総重量の上限は2軸21t、3軸34t、4軸42t、5軸45t(道路総局) | 毎回 | 港を出る前に、軸数ごとの上限内で1台ずつ積付を組む |
| ホールファカン港/フジャイラ港→ジュベル・アリ港 | 沖待ち中央値6.16日(9/6〜12)、一部はフジャイラ揚げと保税トラック(マースク) | 9〜10月 | 沖待ち1週間を見込み、揚げ港の切り替えを受け入れる |
| ダンマン港/ジュベイル港(海上) | マースクは受け付け停止、緊急運賃1,800/3,000/3,800ドル(9/11) | 現在 | ジッダ港揚げとトラックで組み、緊急運賃と海峡通過料を別行で計上 |
| UAE、バーレーン、カタール、クウェート、イラク向け | マースクの契約貨物にOCR500ドル(UAEは9/15、他の4カ国は9/17から) | 9月15日以降の船積み | 日本発が対象かを書面で確認し、輸入原価に別行で入れる |
- 9月15日から:湾岸向けは船社の停止リストをドライ、リーファー、危険品、OOGの別に確認し、受け付けを書面でもらう。
- 航海中の貨物:揚げ地変更や返送は、コンテナが地域に入る前、かつ揚げ予定の72時間前より早く決める。遅れるとマースクの緊急料金がかかる。
- 9月下旬〜10月にジッダ港に着く貨物:荷受人にFASAHの早期提出を頼み、トラックを着岸前に押さえ、2週間分の保管料を輸入原価に入れる。
- クウェート、カタール、バーレーン、UAE向け:ジッダ港経由では組まず、揚げ港(サラーラ港、ホールファカン港、フジャイラ港)と陸送区間をブッキングに書く。
- 10〜12月の契約更新の前:ジッダ、ヤンブー向けの区間を戦争保険が担保するかを、損保に書面で確認する。
今後1〜2カ月の見通し
ジェミニのスエズ経由の初便はAE11が9月19日、AE5が21日、ME2が24日の予定で、AE12は未定。コスコは中国と紅海を結ぶRES4に、10月7日の2航海目からジッダ寄港を加える計画だという(Linerlytica)。9月23日のサウジアラビア建国記念日の前後は、稼働時間を通関業者に確認しておきたい。
船社はスエズ経由への復帰を紅海周辺の安定次第としており、航路が再び迂回に切り替われば喜望峰回りの日数に戻る。2026年2月にも、スエズ経由から迂回に戻した例がある。同じ月の欧州向けとトルコ経由の状況は、欧州向け物流の9月の状況とトルコ物流の最新動向にまとめた。
よくある質問
ホルムズ海峡の封鎖はいつまで続きますか?物流への影響は?
終わりの時期は示されていません。2026年9月15日時点で、ホルムズ海峡は2月28日からコンテナ船にとって事実上閉じたままで、合同海事情報センター(JMIC)は9月1日に脅威評価を「severe(深刻)」に据え置きました。物流への影響は、サウジ向け貨物のジッダ港への集中、湾岸向けの受け付け停止、緊急運賃として表れています。
ジッダ港ではコンテナの引き取りに何日かかっていますか?
エクスペダイターズは2026年9月2日のアドバイザリーで、荷揚げ後の陸側の遅れを約10〜12日としています。沖待ちはPortcastによる9月6〜12日の中央値で2.2日と短く、着岸の早さは引き取りの早さを意味しません。ジェトロの7月のヒアリングではフリータイムが5日だったため、トラックは着岸前に手配しておくと安全です。
UAEやカタール向けの貨物はどこで揚げて陸送するのですか?
マースクの2026年9月11日の運航情報では、UAE向けはホールファカン港経由か、ジュベル・アリ港への陸送に限られます。以前ジッダ港経由だったクウェート、カタール、バーレーン、UAE向けは、サラーラ港かホールファカン港で積み替え、陸送か湾岸内のフィーダー船で運びます。ホールファカン港の沖待ちは中央値6.16日(9月6〜12日)です。
マースクの緊急サーチャージ(OCR)は日本発にもかかりますか?
公表資料からは判断できません。OCRは契約貨物に1本500ドルで、UAE向けは2026年9月15日、バーレーン、カタール、クウェート、イラク向けは9月17日から適用されます。「極東アジア」発は除くとしていますが、その範囲は示されていないため、船社かフォワーダーに書面で確認してください。湾岸向けの緊急運賃は、これとは別にかかります。
サウジアラビアの海上戦争リスク保険プールとは何ですか?
サウジ政府が2026年9月9日に承認した、サウジ再保険会社が主導する保険の枠組みです(ジェトロ、9月14日)。紅海と湾岸を含む全海域で、海上・陸上・航空の貨物、船体、用船者責任、P&Iを対象としますが、開始日、資本金、保険料は示されていません。まずは自社の戦争保険が中東向けの区間を担保するかを、損保に書面で確認してください。
出所:マースク 中東運航情報第46号(2026年9月11日)、OCR告知(9月9日、11日)、ジェミニ航路の変更(9月14日)、市場情報(8月14日、9月9日)、AE19(8月10日)、MECL(7月9日)。ロイズ・リスト・インテリジェンス(ホルムズ海峡ブリーフ9月9日、紅海ブリーフ7月23日、8月6日)。Xeneta(9月9日)。Portcast(9月6〜12日のデータ、9月13日更新)。エクスペダイターズ(9月2日)。アラブ・ニュース(Mawaniの7月統計、8月12日。JLLの2026年4〜6月期データ、8月26日)。DPワールド 半期決算(8月13日)。セマフォー(9月2日)。英国海運貿易オペレーション(9月13日報道)。ザカート・税・関税総局(2025年5月2日)とONEのアドバイザリー(2025年10月8日報道)。SABERの品目追加(2026年8月26日報道)。サウジアラビア道路総局(2024年9月24日)。サウジアラビア鉄道CEO(アラブ・ニュース、1月21日)。Linerlytica(8月9日)。財務省 貿易統計(7月分)。ジェトロ(7月16日、9月14日)。日本海事新聞(9月15日付)。ジッダ港の約9割はCargoDuoの試算、積付の数字はすべてCargoDuoの実出力。2026年9月15日時点の情報。更新:2026年9月15日(初版)。誤りや古くなった記述に気づいたら知らせてほしい。確認のうえ訂正する。